UPDATE | 2024年02月13日
皆さんは、日本語の苦手なところ、また難しく思うところはどこですか? 人によってどこかは違いますね。発音、漢字、文法などが難しいと感じている方が多くいるかと思いますが、私が日本語学習者として一番苦労しているのは語彙です。 今回、同じ発音ながら意味が様々ある「かける」という動詞についての記事を共有します。日本語能力試験N5レベルの言葉ですが、よく調べてみると漢字の書き方も多いし、意味も特徴も多種多様です。「かける」は、どんな漢字を書くのか、どんな文脈でどう使えばいいのかを紹介したいと思います。
「かける」という言葉は書き方がいくつかあります。それぞれの漢字を使った「かける」の基本の意味を見ていきましょう。
・掛ける: ぶら下げる
・欠ける: 不足する
・架ける: 物と物の間を渡す
・懸ける: 差し出す、託す
・賭ける: 勝負事をする
・駆ける: 足で走る
・翔る : 空を飛ぶ
その他にもありますが、上記は中でも使用頻度が高いと思われる漢字となります。また、漢字が使われずに、ひらがなの「かける」で書かれる場合も非常に多いです。
これらは基本の漢字とその意味となりますが、文脈から離れて漢字だけで覚えようとするより、実際に使われている表現の一部として文脈ごと覚えることをおすすめします。一部を以下より場面に分けて紹介していきます。
部屋の中の状態、また部屋を飾ったりするときの作業を説明するために「かける」がよく使われています。
・壁に時計をかける。
・壁に絵をかける。
・フックに鞄をかける。
先ほどご紹介した漢字のうち「掛ける」の意味ですね。ある高さに何かをぶら下げる時に使われます。
次の例を見てみましょう。
・テーブルに布をかける。
・窓にカーテンをかける。
こちらも「掛ける(ぶら下げる)」の意味に近いですね。ただし、上記の例文に共通しているところは、ある高さにかけた対象は「両端が折れ曲がっている、あるいは湾曲し得る性質を持っているもの(布、カーテン)」となっていて、「カバーする」という意味も含まれています。
もしカバーの対象が「折れないもの」でしたら、別の動詞を使いましょう。
×テーブルにトレーをかける。
→テーブルにトレーを置く。
水や気体を離れた場所から他の物体の表面に付着させる動作も「かける」で表現できます。
・机の上に清掃スプレーをかけて掃除した。
・部屋にいた虫に殺虫スプレーをかけた。
掃除といえば、次の文章にも「かける」を使います。
・毎週末、部屋に掃除機をかけるようにします。
この「かける」は「機械を使う」という意味になります。
色々掃除して疲れると、椅子に座りたくなりますね。
・椅子におかけください。
・このベッドは腰かけやすい。
「かける」は「高さのあるものに座る」という意味もあります。
突然ですが、部屋の面積を知る方法を知っていますか?部屋の面積を知るためには、部屋の縦の長さと横の長さを測って、それをかけます。
・4に3をかけると12になる。
・「体積」に「比重」をかけると「重量」が分かる。
以上、部屋の中で使われる「かける」の様々な意味のまとめでした。
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「かける」がよく使われる次の場面は炊事のときです。様々な例文を見てみましょう。
・鍋を火にかける。
上記の例文は「火にかける」という固定表現が使われています。鍋といった調理器具をコンロなどの上に置いて加熱するという意味になります。
次に、液体や粉を下に向けて移動させる行為を表す「かける」を見ていきましょう。
・ごはんに溶き卵をかける。
・アイスクリームにキャラメルソースをかけようとしたが、間違って醬油をかけてしまった。
何らかの料理に上から液体や粉を追加するときは「かける」と言います。
液体や粉状のものでなければ、他の言葉の方が適切です。
×ごはんにゆで卵をかける。
→ごはんにゆで卵をのせる。
粉状のものの例文も見てみましょう。
・サラダにたっぷり塩をかけた。
・毎朝トーストにバターを塗って、その上にシナモンをかけて食べています。
手で振ったり、何らかの器を振りながら粉を追加し、さらにその粉がかけられたものの上に残って見えるという状態を表すときに「かける」を使います。
そのため、追加した粉が見えなくなってしまうような場合は「かける」は使えません。
×コーヒーに砂糖をかけないようにします。
→コーヒーに砂糖を入れないようにします。
×鍋にお湯をわかし、塩をかけて混ぜます。
→鍋にお湯をわかし、塩を入れて混ぜます。
コーヒーや水に粉を追加するとすぐ見えなくなるので「かける」の使用は不適切ですね。
次の例文です。
・味付けで何かがかけているね。
・花子さんの料理は世界一美味しい!長年料理に努力と時間をかけていた結果ですね。
「かける」を使える次の場面は、「人間関係」です。この文脈の例文も用意しておきましたので、ひとつずつ見ていきましょう。
・私の夢は、外交官になって世界に友情の橋をかけること。
「漢字の使い分け」で紹介した「架ける(物と物の間を渡す)」のニュアンスがある例文です。固定表現として「橋をかける」で覚えておくと良いでしょう。
ちなみに、「橋を架ける」は文字通りに物理的に渡れる橋やロープの話の場合で、上記の例文のように比喩的に人などの間の友情や関係について話すときは「橋を懸ける」で漢字を使い分けるのが正式です。
・ご不明な点がございましたらお気軽にお声がけください。
・本日中に母に電話をかけようと思ったが、結局遅くまで忙しくてかけられなかった。
「声をかける」と「電話をかける」も固定表現として覚えることをおすすめします。
・この度ご迷惑をおかけしてしまい大変申し訳ございませんでした。
・気遣いに感謝しているが、君に負担をかけるつもりがないよ。
・あの子はいつも母に心配をかけている。
誰かに心労・足労・迷惑・心配・負担をさせる時に「~をかける」と言い、謝罪するときなどによく使われます。
ただし、この5つの言葉に似たような言葉でも使用されないものもあるので注意しましょう。(例えば「不安をかける」、とは言いません。)
次の例文は慣用的な「かける」を使っています。
・彼女の話し方は魔法をかけたように誰でも落ち着かせる。
・あのおもちゃは高すぎて買うべきじゃなかったのに、息子の甘い言葉の罠にかけられてしまった。
上記の「罠にかける」は、先ほどの「橋をかける」と同じく比喩的な表現ですね。
・私は命をかけても自分の子どもを守るよ。
どんな結果になっても、かけがえのない物を差し出すという意味になります。
・このような失態をもう二度と繰り返さないように父の名にかけて誓います。
強い誓約や決意を表す時に、「"非常に価値の高い何か"にかけて」という形で使われます。もし違約したらかけたものの名誉や功績が失われるので、絶対に成功させる覚悟があるという意味となります。
以上、「人間関係」の文脈で役に立つ「かける」の様々な意味を見てきました。
「かける」の様々な意味を大きく分けてみましたが、もちろん、他の意味と固定表現も多くあります。以下の例を挙げます。
・眼鏡をかける。
・ドアに鍵をかける。
・クモが巣をかける。
・(競馬で)この馬に1万円をかける。
など
上記の表現もよく使われているので認識しておきましょう。
「かける」は以下のような文型にも使われます。
①・当社はイベント運営にかけてはどこよりも優れています。
・動物にかけての知識は誰よりも詳しい。
②・今週から来週にかけて雨の日が多いらしい。
・クリスマスの2週間前に、部屋の床から天井にかけて飾りを付けました。
①は、「この分野・スキルの範囲で」という意味で、何かと比較してのプラスの評価を続ける形になります。使い方は「にかけては」と「にかけての」が二つあります。「にかけての」の場合は後ろに名詞を続けるといった使い分けになります。
②は、「AからBまでの範囲」を表す文法です。範囲としては時間も場所もありえます。
この記事では、「かける」の様々な漢字の使い分け、文脈に分けた固定表現、また含まれる文法をまとめました。皆さんのご参考になれば嬉しいです!
日本語の勉強、頑張ってください!
(株)アクセスネクステージ 外国人進路支援事業部の社員。ベラルーシ出身。2021年6月に来日し、2023年3月までお茶の水女子大学で国費研究留学生プログラムに参加。趣味はPCゲーム、絵描き、国際交流。
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