着物の歴史
着物の語源は字のとおり「着る物」という意味で、以前は衣服全般を指す言葉でした。
150年ほど前に洋服が日本に入ってきたころから、「着物」=「和服」という認識に変わり、現在は「日本の伝統的な衣服」という意味で使われています。
着物の始まりは諸説ありますが、現代のスタイルのものは平安(へいあん)時代(794~1185年)に起源があると言われています。
それよりはるか昔の紀元前には一枚の布を体に巻きつけたものや、布に穴を空けて頭を通すスタイルのものが主流で、その後、中国大陸の文化の影響もありズボン型やワンピース型の衣服へと変わっていったようです。
そこから日本の気候に合わせて少しずつ変化していき、平安時代には着物文化が大きく発展しました。
身分階級によって着物の色やデザインが異なり、カラフルな着物は身分の高さを表すステータスのようなものでした。
日本の伝統的なカードゲーム「百人一首(ひゃくにんいっしゅ)」にも、色とりどりの着物を幾重にも重ね着した「十二単(じゅうにひとえ)」が描かれています。当時、貴族の女性達は男性に顔を見せずに、十二単の裾(すそ)を部屋の中から見せることで配色のセンスや知性をアピールしていたという話もあります。
今も昔も身に付けるもので自分自身の魅力をアピールするというのは変わっていませんね。
その後も着物文化は進化し続け、江戸(えど)時代(1603~1867年)に最盛期を迎えます。貴族や武士だけのものだった着物が、上流階級以外の人達にも次第に広がっていきました。ただ、身分によって素材や色に制限があったため、裕福な商人たちが派手な刺繍のものを着る一方で、庶民の着物は地味な色に限られていました。そこで、人々は着物の柄(がら)や帯(おび)の結び方などでおしゃれを楽しむようになったと言われています。
明治(めいじ)時代(1868〜1912年)になると外国の文化の影響を強く受けるようになり、政府の西洋化政策によって公式な場では洋服を着るように定められ、洋服が広がっていきました。
それでも普段は着物(和服)で過ごす人も多く、洋服が日常着として定着したのは戦後になってからで、着る機会が減っていった着物は特別な行事の際に正装として着る、という存在になっていったのです。